書店のビジネス書コーナーに「休養学」という背表紙が並んでいる。運動学でも栄養学でもなく、休養の学問。2024年に出たこの本は16万部を超えるベストセラーになった。休み方の本が、働き方の本の隣で売れている——この光景そのものが、いまの日本の疲れ具合を語っている気がしてならない。

「休養学」は人の名前から始まった学問だ

『休養学 あなたを疲れから救う』(東洋経済新報社)の著者は、医学博士で日本リカバリー協会代表理事の片野秀樹さん。協会は毎年、全国の働く人の疲労状況を大規模に調査していて、その2025年版では、高い頻度で疲れている人が働く人の46.3%にのぼった。積極的休養の記事でも触れた数字だが、この調査と啓発活動の中心にいる人物が、休み方を一冊の「学」として整理した——それがこの本の位置づけだ。売れた理由は明快で、みんな疲れているのに、誰も休み方を教わっていないからだ。

休みは1種類ではない。「寝る」はその一部でしかない

本の核は、休養の分類にある。休養を生理的・心理的・社会的の3つに分け、さらに7つのタイプ(休息・運動・栄養・親交・娯楽・造形/想像・転換)に整理する。眠る・横になるは「休息」。軽く体を動かして巡りを保つのは「運動」。気の置けない相手と過ごすのは「親交」。趣味に没頭するのは「娯楽」、手を動かして何かを作るのは「造形/想像」、環境を変えて気分を切り替えるのは「転換」だ。この枠組みで見ると、多くの人の休日は「休息」タイプ一択に偏っていることが分かる。ごろ寝も動画も、7分の1しか使っていないのだ。疲れているのに休日明けがだるいなら、足りないのは休みの量ではなく種類かもしれない——分類というのは、こういう気づきを生むための道具だと思う。

ちなみに日本リカバリー協会は書籍の外でも、休み方の教育に「休養士」という資格育成の形で取り組んでいる。休み方が本になり、資格になる。数年前なら冗談に聞こえた展開が、疲れた国では真顔で進んでいる。

では、この本の何が新しかったのか。私の読みでは、休みを「消耗のあとに埋める作業」ではなく「先に仕込む行為」として設計し直した点に尽きる。疲れ切ってから泥のように眠るのではなく、疲れる前に休みを予定に組み込む。攻めの姿勢で休む。この順番の逆転は、休むことに罪悪感を抱きがちな頑張り屋にとって、行動を変えるための理屈になる。

休日の予定表に「種類の違う休み」を2つ書く

  1. 次の休日に、タイプの違う休みを2つ入れる。 昼はゆるく体を動かす(運動タイプ)、夜は誰かと飯を食う(親交タイプ)、のように組み合わせる
  2. 「疲れてから休む」を1回だけ逆にする。 大きな仕事の前日にこそ、意識して早く休む
  3. 自分がいつも選んでいる休みのタイプを数えてみる。 偏りに気づくだけでも、次の休日の設計が変わる

本の要点はここに書いた範囲がすべてではない。興味が湧いたら原典にあたってほしい。

出典