高度1万メートル、太平洋の上。NASAの研究者たちは、長距離路線の操縦士に巡航中の仮眠を許可するとどうなるかを実測した。昼寝の話としては、これ以上ないほど真剣な現場だ。結果は数字で残っている。そして数字は、昼下がりのオフィスでうとうとしている私たちの味方をしてくれる。
平均25.8分の仮眠が、反応と覚醒度を引き上げた
1990年代にNASAエイムズ研究センターのマーク・ローズカインドらが行ったこの研究では、太平洋路線の運航乗務員を2グループに分け、一方に巡航中40分の休息機会を与えた。面白いのは、与えられた側の乗務員が休息機会の93%で実際に眠れていたことだ。訓練された操縦士だから特別に寝つきが良い、という話ではないだろう。長距離運航の疲労は、機会さえあれば数分で眠りに落ちる水準まで、プロの体に溜まっていたということだ。乗務員は平均5.6分で眠りに落ち、平均25.8分眠った。仮眠をとったグループは、とらなかったグループと比べて、反応課題の成績で34%、脳波で測った生理的な覚醒度で54%の改善を示し、その状態は着陸フェーズまで持続したと報告されている。26分前後の短い眠りが計測可能な差を生む——「パワーナップ」という言葉が世界に広まる根拠になった研究だ。
30分を超えると、今度は敵に回る
ただし仮眠は長いほどいいわけではない。深い眠りに入ってから起きると、頭に霧がかかったような状態(睡眠慣性)がしばらく続く。だから短く切り上げることが技術になる。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」も、日中の眠気への対処として、昼寝をとるなら午後の早い時間帯に短時間で、と整理している。目安は30分以内、遅くとも15時まで。夕方の仮眠は夜の眠りを削り、翌日の眠気を作るという悪循環につながる。
ここで白状すると、私は昼寝を長らくサボりだと思っていた。考えが変わったのは、操縦士のための研究だと知ってからだ。NASAが仮眠を調べたのは、休ませるためではなく、安全に飛ばすためだった。つまり仮眠は休憩ではなく、後半戦のための整備に近い。眠気を根性で塗りつぶして働くより、26分で整備を済ませた方が、午後の自分は確実に使いものになる。
環境づくりは大げさでなくていい。椅子に座ったまま、机に伏せて、あるいは車の座席を少し倒して。横にならない姿勢はむしろ好都合で、深く入りすぎるのを防いでくれる。アイマスクか、タオルを目の上に載せるだけでも入りやすさは変わる。完全に眠れなくても構わない。目を閉じて外の情報を止めている時間には、それ自体に頭を休ませる価値がある——眠れたかどうかで成否を判定しないことが、この習慣を続けるコツだ。
明日の昼、目を閉じる練習をする
- 昼食後〜15時の間に、15〜30分だけ目を閉じる。 眠れなくても目を閉じるだけで構わない
- 先にアラームをセットして、30分の壁を守る。 座ったまま・机に伏せたままなら深く入りすぎにくい
- 仮眠の直前にコーヒーを飲んでみる。 カフェインが効き始めるのは20〜30分後。起きる時間に合わせる古典的な小技だ
夜の睡眠を削ってまで仮眠でしのぐ生活が続くなら、それは仮眠の問題ではない。いびきの調査記事で書いたとおり、夜の眠りの側を疑ってほしい。


