8月も終わりに近づいたのに、夜の気温が下がらない。エアコンを切って寝るか、つけたまま寝るか——毎年この時期に繰り返される家庭内の論争には、実は公的な判定材料がある。そして多くの家庭で信じられている「28℃」という数字は、半分誤解されたまま流通している。

あの28℃は「設定温度」の話ではない

夏の室温の目安としてよく聞く28℃は、もともと冷房時の室温の目安として広まった数字で、エアコンの設定温度を28にせよという意味ではない。日当たりや建物の断熱、外気温によって、設定28℃の部屋の実際の室温は30℃を超えることもある。見るべきはリモコンの数字ではなく、部屋の温度計だ。

では眠りにとっての適温はどこか。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、寝室の環境について、室温がおおむね13〜29℃の範囲に保たれることが望ましいという整理を示している。逆に言えば、熱帯夜——夜間の最低気温が25℃を下回らない夜——に冷房なしで寝ることは、この範囲の上限に張りつくか、超えることを意味する。我慢は美徳ではなく、単に眠りを削る選択になっている。

「切って寝る」が一番高くつく

冷房を朝まで入れて寝ることへのためらいは、電気代と「体がだるくなる」という経験則から来ている。だるさの正体の多くは、冷風が体に直接当たり続けることと、温度の下げすぎだ。だとすれば答えは「切る」ではなく「当てずに、ほどほどの温度で朝までつける」になる。タイマーで切る運用は、切れた瞬間から室温が上がり、汗をかいて夜中に目が覚める——深部体温の記事で書いた「下り坂」を、夜中に登り返す形になってしまう。寝入りだけ涼しくても、眠りの後半が守れない。

日本の夏の夜は、もはや根性で乗り切る相手ではなくなった。危険な暑さの夜にエアコンを止めないことは、いまや眠りの話であると同時に安全の話でもある。電気代と天秤にかけるものが何なのかを、一度冷静に考えたい。

家庭内の温度戦争——暑がりの夫と寒がりの妻、のような対立にも、原則は応用できる。部屋の温度は暑がりの側に合わせて低めに保ち、寒がりの側が掛け物と長袖で個別に足す。この順番が逆だと、暑い側は脱ぐものがなくなって詰む。温度は「下げて、個別に覆う」が共存の作法だ。

今夜の設定、3つの実務

  1. 風向きは天井へ、体に直接当てない。 気流は壁と天井を回して部屋全体を冷やす。扇風機を併用するなら壁に向ける
  2. 設定温度ではなく温度計で26〜28℃前後に合わせる。 数字はあくまで目安。朝だるければ1℃上げ、寝苦しければ1℃下げて自分の適温を探す
  3. 湿度を下げる。 同じ温度でも湿度が高いと汗が乾かず暑く感じる。除湿モードや、寝る前1時間の強めの冷房で湿気を抜いておくと、夜の設定は控えめで済む

冷えに敏感な人は、掛け物と長袖で「室温は下げて、体は覆う」方向に調整を。体調に不安がある人は無理のない範囲で。

出典