サウナに行った日の夜は、布団に入った記憶がないくらい早く落ちる。サウナ好きなら誰もが知っているあの感覚に、ちゃんと説明がつく時代になった。主役は「深部体温」——体の内側の温度だ。そしてこの仕組みを知ると、サウナに行けない平日の夜にも応用が利く。

人は、体の内側が冷えていくときに眠くなる

体の表面ではなく内側の温度・深部体温は、一日の中でゆるやかに上下している。夜、眠りに向かうときは、手足から熱を逃がして深部体温が下がっていく。このときの「下り坂」が急なほど、人は眠りに入りやすいとされる。ここで効くのが、あえて一度温めるという操作だ。入浴で深部体温を持ち上げると、体は上がった分を取り戻そうと放熱を強め、結果として下り坂が急になる。米テキサス大学などの研究チームは2019年、過去の研究を統合した解析で、就寝の1〜2時間前に40℃前後の風呂やシャワーで体を温めた場合に、寝つくまでの時間が短くなったと報告している。

サウナはこの「一度温める」を最も大胆にやる装置だと言える。90℃の熱気で深部体温を押し上げ、水風呂と外気浴で放熱の勢いをつける。あの夜の強烈な眠気は、下り坂を人工的に急勾配にした結果——と読むと、体感と理屈が一致する。

「サウナ後にすぐ寝る」は、実はもったいない

ただし時間割には注意がいる。仕組みの主役が下り坂である以上、体温が高いままのタイミングで布団に入っても、まだ坂は始まっていない。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」も、生活習慣と睡眠の関係の中で、就寝直前ではなく就寝の1〜2時間ほど前に入浴を済ませることに触れている。サウナ帰りにそのまま寝落ちするのではなく、帰宅して水を飲み、照明を落として1時間ほど過ごしてから寝る。この「余白の1時間」が、せっかく作った坂を無駄にしないコツになる。

編集部としては、ここにサウナ文化の面白い逆説があると考えている。サウナの本体は施設の中ではなく、施設を出たあとの数時間にある。ブレインスリープのサ枕企画のように「サウナ後の眠り」に照準を合わせた商品が出てくるのも、みんな薄々それに気づいているからだろう。

サウナに行けない夜は、風呂で坂を作る

  1. 寝たい時刻から逆算して、1〜2時間前に風呂を済ませる。 40℃前後で10〜15分が目安
  2. 風呂上がりの1時間は、照明を落として過ごす。 坂が下り始めるまでの助走時間と考える
  3. サウナの日は、帰宅後すぐ寝ずに水分と余白を挟む。 眠気のピークを布団に合わせにいく

高温の入浴やサウナは体への負荷が大きい。体調に不安がある人は無理をせず、医師に相談してから試してほしい。

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