仕事が忙しくなり、ジムから3週間、足が遠のく。再開の日、扉の前で少し身構える人は多いはずだ。積み上げてきたものが、この3週間でどこかへ消えてしまった気がしてならない。本当に、筋肉は元の場所まで戻ってしまうのだろうか。24週間かけたある実験では、3週間まるごと休む期間をはさんだグループも、休まず続けたグループと筋肉の太さ・挙上重量がほぼ並んだと報告されている。

キーは回復の期間にあった

研究チームは2013年、European Journal of Applied Physiology誌に、休止と再開をめぐる実験を発表した。対象は若い男性14人。全員を、2つのグループのどちらかに割り振った。

一方のグループは、24週間ずっとベンチプレスを続けた。もう一方のグループは、6週間トレーニングする期間を3回、そのあいだに3週間まるごと休む期間を2回はさんだ。合わせて24週間になる。どちらのグループも、鍛える週は週3回、1RM(1回だけ挙げられる最大重量)の75%の重さでベンチプレスを3セット×10回おこなった。

数え直すと、差が見えてくる。続けたグループは24週間、ずっとバーベルを握っていた。休んでは戻したグループは、6週間×3回で実質18週間しか握っていない。e-ヘルスネットは、鍛えた筋肉には回復の期間が必要だと記載している。ただしそこで想定されているのは日単位の間隔で、今回の3週間という単位とは別の話だ。

筋肉量も、ベンチプレスの記録も、ほぼ並んだ

24週間後、研究チームは上腕三頭筋と大胸筋の断面積をMRIで計測し、ベンチプレスの1RMもあわせて測定した。続けたグループと休んでは戻したグループの数値は、ほぼ並んでいたという。

実質のトレーニング週数に6週間の差があったにもかかわらず、筋肉の太さも、挙げられる重さの伸びも、大きくは変わらなかったという結果だ。研究チームはその理由として、連続グループでは終盤にかけて伸び率そのものが鈍っていったこと、休んでは戻したグループでは休止をはさんでも再開後の伸び率が落ちなかったことを挙げている。だとすれば、6週間分の練習は、消えていないと見るのが自然だろう。

ただし、これはひとつの実験の報告であり、対象は若い男性14人にかぎられる。女性や高齢者では違う結果になる可能性があり、そのまま当てはまるとは限らない。だとすれば、なぜ多くの人は「休んだら戻ってしまう」と信じ込んでいるのだろうか。

「戻ってしまう」という恐怖は、皆勤カード文化から来ている

記録が途切れると、それまでの分もまとめて消えた気になる人は多いだろう。似た感覚は、学習アプリの連続記録バッジにもある。1日サボるとゲージが0に戻り、妙な喪失感を覚える。休まず通った日数を誇る「皆勤」の文化も、根っこは同じだ。

だが体は、そんなアプリのゲージほど単純にはできていない。実験の被験者たちは、休んでは戻すことを2回くり返して、それでも記録の伸びを保った。皆勤ではなく、休止期間を前提にした続け方でも、ゴールには同じように届く。そう見てもいいのではないか。少なくともこの実験の中では、3週間の空白は「衰退」として現れなかった。

再開の日に、するべきことは多くない

実験の結果は「サボっても平気」という免罪符ではない。休んだ分だけ、再開の仕方には工夫がいる。

  1. 休むと決めた日に、再開日をカレンダーへ先に書き込んでみてはどうだろう。 「そのうち戻る」ではなく、日付を一つ決めておくだけでいい
  2. いきなり元の重量には戻さず、軽いところから入り直してみてはどうだろう。 焦って戻すよりも、体の反応を見ながら行う方が、怪我のリスクを抑えられる。
  3. 筋トレと有酸素の順番で書いたように、同じ日にやるなら筋トレを先に置く。 再開期はその順番だけ守って、量は落としたまま戻していくのも手だ

関節や心臓に不安がある人、ブランクが長かった人は、重量を戻すペースについて医師に相談してから進めてほしい。

今日やることを一つに絞るなら、再開日をカレンダーへ書き込むことだけでいい。そうすれば3週間の空白は、「止まった時間」ではなく「戻る日が決まっている時間」に変わってくれるはずだ。

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