寝る前のスマホがよくないことは、もう全員が知っている。知っているのにやめられないのは、たぶん敵の正体を半分しか教わっていないからだ。犯人は光だけではない。もう一人いる。そしてそちらの方が、おそらく手強い。
一人目の犯人・光は、眠りの合図を止める
まず教科書どおりの方から。厚生労働省のe-ヘルスネットは、眠りを促すメラトニンというホルモンが就寝の2時間ほど前から分泌され始め、そのタイミングで強い光を浴びると分泌が抑えられて寝つきに影響する、と解説している。画面の光は目の近くで浴びる光源で、夜の照明としては明るすぎる側にある。ここまでが有名な話で、ナイトモードやブルーライトカットの議論もこの延長線上にある。
二人目の犯人は、面白すぎる中身だ
だが光を全部封じても、問題は残る。スマホの中身は、続きが気になるように設計されているからだ。短い動画は次が自動で再生され、SNSは更新のたびに新しい何かを見せる。頭は就寝どころか観覧席モードに入り、「あと1本」が積み重なって、就寝時刻そのものが後ろへずれていく。光がメラトニンを止める生理の問題だとすれば、こちらは時間が溶ける設計の問題だ。ナイトモードは一人目の犯人にしか効かない。二人目は画面を暖色にしたくらいでは止まらない——ここを分けて考えるべきだ、というのが編集部の結論だ。
だから対策も二段構えになる。光には照度で、中身には物理で対抗する。よく言われる「寝室にスマホを持ち込まない」が今も最有力なのは、精神論だからではなく、二人目の犯人に効く唯一の対策がアクセスの遮断だからだ。意志の力で設計と戦ってはいけない。設計には設計で返す。
遮断したあとの「手持ち無沙汰」には、置き換えを用意しておくといい。紙の本や雑誌は光の問題がなく、続きが自動再生されることもない。音声——ラジオやポッドキャスト——は画面を見ずに済む点で、夜の相棒として優秀だ。スマホをやめる、と考えると失敗する。夜の最後の30分を何に渡すかを先に決めておく、と考えると続く。
もうひとつ付け加えると、光の話は夜だけで完結しない。e-ヘルスネットの同じ解説は、朝に太陽の光を浴びることが体内時計を整える方向に働くことにも触れている。夜のスマホを我慢する日々より、朝カーテンを開ける習慣とセットにした方が、リズム全体としては立て直しやすい。
今夜から、充電器を寝室の外へ
- 充電の定位置をリビングに移す。 目覚ましはスマホ以外で。物理的な距離が、あと1本を物理的に終わらせる
- 就寝1時間前に部屋の照明を落とす。 風呂で作った体温の下り坂を、明るさで邪魔しない
- どうしても持ち込むなら「見る用事」を先に決める。 目的のない画面が一番長い。用事が終わったら伏せて置く
眠れない日が何週間も続く場合は、スマホ習慣の問題とは別の話だ。ためらわず専門の医療機関に相談してほしい。


